建築環境の脱炭素化:COP26の重要ポイント

2050年までにネットゼロを達成するために、セメント・建設業は何ができるだろうか。本稿では、COP26気候変動枠組条約締約国会議でマッキンゼーが主催したラウンドテーブル・ディスカッションから重要ポイントを紹介する。

世界のCO2排出量の約25%を建設環境、すなわちセメント・建設のバリューチェーンが占める。2050 1 年までにネットゼロを達成するには、今後30年間で建築・建設業界の脱炭素化を過去30年間の3倍のスピードで進める必要がある。エコシステムを構成するさまざまな企業が脱炭素化に取り組んでいるが、どのプレイヤーも単独でこの目標を達成することできない。スコットランドのグラスゴーで開催されたCOP26気候変動枠組条約締約国会議において、マッキンゼーは世界の不動産オーナー、建設請負業者、資材サプライヤー、投資家、機器メーカー、ディスラプター等を招待し、今後の道筋を見定めるべく、議論を以下の問いに絞って対話型セッションを開催した。

  • いま、業界が取るべきアクションとは何か
  • バリューチェーンに関わるステークホルダーは、どのように連携すれば成功するのか

今回のラウンドテーブルでは、4つの重要テーマが持ち上がった。

  1. 課題は大きいが、集中している。 資材加工および建築物の運用は、建築物・インフラからの排出量の約97%を占める2。ネットゼロを達成するには代替材料、脱炭素セメントや鉄鋼、エンボディードカーボンの削減を取り入れた、新しい建築物への転換が必要となる。既存のストックには再生可能なエネルギー源、建築物の効率的な運用、パフォーマンス測定が要求される。そのためには、より利便性の高いエンドツーエンドのレトロフィット・ソリューションも必要だ。
  2. 迅速に行動し協働する企業だけが、課題を克服し、価値を創造できる。 COP26では、ネット・ゼロの達成がビジネスの組織化原則となっただけでなく、競争上の差別化ポイントになっていることが明らかになった(詳細は、グラスゴーで持ち上がった5つの重要優先事項に関するマッキンゼーのサマリーを参照されたい)。建設業界ではファーストムーバー企業が政策、資金調達、プロジェクト面の課題によって手詰まり状態となっている。そうした企業のCEOは、企業連盟に参加したり連携体制を築くなどし、また投資とイノベーションとのペースを合わせることで、手詰まり状態から抜け出せる可能性がある。
  3. どのような方法で実現するのか
    • ボリュームから価値へのシフト。脱炭素は成長へのライセンスであり、成長には責任が伴う。建設業界はこれまで、価値の創造をGDPや人口の増加に依存してきた。しかし、レトロフィットや再設計の世界においては、それだけでは不十分だ。企業は脱炭素化や新たなグリーン需要への対応によって差別化を図る必要がある。例えば、環境配慮型の建築物を建設するデベロッパーは、より手頃な資金調達やグリーンインフラに特化した計画区域へのアクセスが見込める。反対に、脱炭素化に取り組まない企業は、存続の危機に追い込まれるだろう。
    • シェアリングによる規模の拡大。フラグメンテーションは、新たなグリーン投資におけるリスク方程式に影響を及ぼす。建設業界は、共通基準の策定、研究開発リソースの共有、および脱炭素化レバーや新たな技術を適用し連携するフォーラムの開発を通じて、イノベーションを推進できる。
    • グリーン投資や新技術に本気で取り組む。 Glasgow Financial Alliance for Net Zero(GFANZ)に参加する事業体の総金融資産が130兆ドルに上る事実からも明らかなように、持続的なグリーン資金調達は数多く行われている。それでもなお、投資家にとっては大規模なグリーンプロジェクトが少ない状況だ。企業は既存のアセットにおける大規模な脱炭素化、建築環境に貢献するさまざまなグリーンスタートアップとの提携など、持続可能性に大きく賭けることで、より多くの資金を調達することが可能となる。
    • 顧客を起点とする。 需要を掘り起こすには、高品質で利便性が高く、投資対効果が明らかなソリューションが必要だ。例えば、レトロフィット市場では複雑性、魅力に乏しい提案、金銭面のメリットの不透明さから、消費者が難色を示すことも少なくない。企業は、新たな製品や統合型ソリューションに投資し、顧客の問題に対しデザイン思考的なアプローチを実施することで、これを打開できる。
    • イノベーションの文化を醸成する。 建築・建設業界は変化への対応が遅いと言われる。COP26の参加国は、イノベーション文化を醸成する必要性に言及している。 具体的なステップとして、新規純増数の目標設定、実用最小限の製品(MVP)における「テスト・アンド・ラーン」の推進、ベンチャーキャピタル型の定量式資金調達の実施、研究開発予算の増額、認証を活用したサステナビリティプレミアムの推進、基礎研究段階におけるコラボレーションの醸成、などが挙げられる。
    • 規模の拡大に必要なスキルを、今こそ習得する。 COP26では、建築・建設業界が転換期を迎えていることが示された。政策の転換や資本の移転が進めば、スキルがボトルネックになってくる。例えば、レトロフィットに明日必要な人材が、今日の時点で確保できていないのだ。官民を問わず、業界のリーダーは、予測される需要に応えるために必要なスキルや能力の開発に今すぐ着手しなくてはならない。
  4. 公共セクターは、「脱炭素経済」のインセンティブを調整することで業界を支援できる。 カーボンプライシング、建築性能基準の引き上げ、建築基準法の改正を複合的に実施することにより、消費者や業界に対し、より公正かつ秩序あるネットゼロへの移行を促すことが可能だ。なお、バイオマスなどの過渡的なソリューションの場合は、投資期間について明確な指標が必要である。

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