昨年の年末商戦はこれまでとは少し違うと感じた買い物客は少なくないのではないか。たとえば、AIアシスタントが親族が気に入りそうでかつ年末年始前に届くギフトを探してくれたり、欲しいなと思っていたノイズキャンセリングのヘッドホンを3種類比較してくれたり、欲しい洋服を5個のサイトから比較してくれるだけでなく、そのまま「買い物かご」に入れてくれて「このまま購入しますか」と確認されるだけの買い物体験を送った人もいるのではないか。
この一年で、AIエージェントが実験段階を脱し、日々の買い物の一部となった。選択肢を整理し、買い物かごに商品を入れ、トレードオフを整理し、買い物に関する意思決定を後押しする役割を果たしている。今日では小さな利便性の向上に見える変化も、やがて買い物の仕方そのものを大きく変えていく予兆であるといえる。マッキンゼーの調査によると、保守的なシナリオでも、2030年までにAIエージェントが世界の消費者向けの商取引の約3兆〜5兆ドルを仲介する可能性がある1。エージェントは人間と同じようにインターネットを使い、ウェブサイトにアクセスし、APIと連携しながら、ロイヤリティプログラムも利用でき、短期間で広く普及すると見込まれる。その結果、何を買うかの判断や、商品の見つけ方、価値の源泉が変わっていくことが見込まれる。
これらのテーマの多くは、昨年秋に発表したレポート「The agentic commerce opportunity: How AI agents are ushering in a new era for consumers and merchants」で取り上げているが、本稿では、その内容を踏まえ、「エージェンティックコマースの自動化曲線」と呼ばれる概念を取り上げる。これは、どこまでをAIエージェントに委ねるかによって、買い物体験がどう変わるかを示すものである。また、本稿では、顧客は人間のままでありながら、重要な意思決定をAIエージェントが担うようになる世界を見据え、小売業者が何をどのように備えるべきかを整理する。
エージェンティックコマースの自動化曲線 (6つのレベル)
エージェンティックコマースの台頭は3つの要因がある。
第1に、AIエージェントの性能が向上し、意思決定に使える水準(decision-grade usefulness)に達したことである。これにより、消費者は着想(inspiration)段階だけでなく、候補の絞り込みや商品の組み合わせ、さらには購入の実行まで任せられるようになった。
第2に、真に自律的に機能するための基盤(レール)が整ってきたことである。MCP、A2A、AP2、ACP、UCPといったオープンソースプロトコルにより、エージェントはデータを解釈・処理し、ほかのエージェントと連携し、安全に取引できるようになっている。2025年12月にLinux Foundationが設立したAgentic AI Foundationには、Anthropic、Block、Google、Microsoft、OpenAIなどが参画し、自律的な購入や取引を大規模に実現するための相互運用性、アイデンティティ、決済の基盤づくりを進めている2。
第3に、購買意図の発生地点が「上流」である。例えば、近々開催される誕生日パーティーの会話や旅行のカレンダー通知、あるいはデバイスからの在庫切れの通知など、ニーズが生じた段階でエージェントが機能し始める。
小売企業にとって、この変化は重大である。自社の商品カタログ、ポリシー、価値提案が機械可読(machine-readable)でなければ、エージェントは——ひいては消費者も——あなたの存在にたどり着かない。どれだけブランドが支持されていても例外ではない。
とはいえ、AIエージェントの台頭は、人間主導のショッピングから完全自律型への一足飛びの移行を意味するわけではない。エージェンティック・コマースは「曲線」に沿って進展している。その曲線は、購買体験のどこまでをエージェントに任せるかによって定義され、あらかじめ決めたルールに従って処理する段階から、複数のエージェントが自律的に判断しながら全体を運用する段階までを、6つの異なる自動化レベルから構成されている。重要なのは、これらのレベルは「エージェントが技術的に可能なこと」を示しているのであって、「消費者が常に許容すること」を示しているわけではない、という点である。
さらに、エージェンティックコマースの導入は、カーブに沿って一様に進むわけではない。AIエージェントの能力は進化を続けているが、消費者がどこまでエージェントに任せるかは主に2つの要因に左右される。1つ目は時間と信頼である。エージェントに慣れ、その動きに信頼が持てるようになるにつれて、より多くを任せるようになる。2つ目は購買カテゴリーによる違いである。どこまで任せるかは、購入金額や、その買い物がどれだけ重要か、自分らしさに関わるかどうか、購入後に後悔する可能性といった点によって大きく変わる。(本稿は小売体験に焦点を当てている。エージェントがB2Bコマースに与える影響については、コラム「B2Bにおけるエージェンティックコマースの展開」を参照)。
任せられる範囲には一定の上限があり、カテゴリーや場面によっては、あるところで頭打ちになる。状況によっては、最初から最後まで任せてもよいと感じることもある。一方で、あえて途中で止め、人が判断することもある。それはエージェントの能力が不足しているからではなく、人が関わること自体に体験としての価値があるためである。
こうした理由から、このモデルは「はしご」ではなく「曲線」として理解するのが適切であり、自動化レベルは段階を順に上がっていくものとしてではなく、どこまでをエージェントに任せるかによって変わるものとして捉えるべきである。自動化のレベルが高いほど優れているわけでも、より進んでいるわけでもない。重要なのは、できるだけ多くを任せることではなく、どこまで任せるのかである (図表 1)。
レベル0: 設定してあとは任せる (Programed Convenience)
この段階は、エージェンティックコマース以前の基本形である。コーヒーカプセルや洗剤、おむつ、シャンプーなど、補充が必要になる商品は、サブスクリプションや定期的な補充・配送によって自動的に届くようにする。この仕組みはルールに基づいて運用されるため便利だが柔軟性に欠け、文脈をほとんど理解しない。ニーズが変化すると機能しなくなり、、その都度人が調整することになる。こうした仕組みでも、信頼性が高く、必要ならすぐに止めたり変更したりできるものであれば、人は安心して任せるようになる。たとえば2024年には、米国のAmazon利用者のおよそ23%が少なくとも1つのSubscribe & Save (定期おトク便) を利用していた3。
レベル1: 判断を助ける(Assist)
レベル1では、エージェントは選択肢を整理し、比較や判断を助けるが、実際の購入までは行わない。たとえば「75ドル以下で金曜日までに届くギフトを4つ探して。サステナブルなブランドを優先して、違いもまとめて」や、「3つのノイズキャンセリングヘッドホンを比較して、音質やバッテリー、装着感の違いを教えて」といった使い方である。エージェントは商品情報を調べ、口コミを読み、機能を比べて、候補を絞って示す。ただし、どの商品を選ぶかを決めたり、在庫状況や配送といった条件を踏まえて判断したりはしない。カートに入れることもなく、そのまま購入できる状態にもならない。最終的には人が選択肢を見比べ、トレードオフを考えたうえで、次に何をするかを決める。
つまりこの段階では、「検索」と「比較」を代替するが、その先の「選定」と「実行」は人が行う。
小売業者への示唆: マーケティング的な美辞麗句よりも、検証可能なデータが重要になる。商品属性や適用条件、サイズや着用感に関する確かな情報・裏付けのある説明など、エージェントが比較できる形で情報を整える必要がある。
レベル2: 選んでまとめる (Assemble)
レベル2は、質的な転換点である。エージェントの役割が一段進み、分析にとどまらず、購入までの準備を一通り整える「オーケストレーション(全体調整)」へと役割を広げる。この段階では利用者が意図を伝えると、そのまま購入できる形にまとめて返す。「150ドル以内で暖かくて着心地のよい冬用の服をそろえて」「明日から3日間滞在するヴィーガンのゲストのために食材を用意して」といった使い方である。さらに複雑な例では、「4Kモニター2台に対応し、雑音が少なく快適にビデオ通話ができ、翌日配送可能なホームオフィス環境を2000ドル以内でそろえて」といった依頼にも対応する。
レベル1との違いは、エージェントが単にトレードオフや制約を提示するのではなく、それらを解決する責任を負う点にある。個々の商品を選定し、問題なく組み合わせられるかを確認したうえで、価格と性能、在庫状況と配送にかかる時間、キャンペーンと適用条件のバランスを取る。さらに、税金や配送時間、ロイヤルティ特典、代替品の選定まで含めて処理する。提示されるのは単なる候補の一覧ではなく、必要な内容が一通りそろった提案である。そのため、利用者の役割は選択肢を比較することから、提示された内容を確認し、必要に応じて調整する(オーケストレーション)へと変わる。
小売業者への示唆: レベル2で成功するには、APIを前提に商品や条件を提供できることが不可欠である。在庫、価格、配送条件、プロモーション、返品ルールなどの情報を公開し、エージェントがそのまま使える形で整備する必要がある。こうすることで、エージェントが人と同じように商品を選び、まとめて購入できるようになる。
レベル3: 決めた範囲で実行する(Authorize)
レベル3では、行動だけでなく、どの条件で処理を行うのかというルールの設定も含めてエージェントに委ねる。毎回承認するのではなく、定めたルールの範囲でエージェントが一連の処理を自動的に実行する。たとえば、「食料品は120ドル以内で、金曜の18時から20時に届く場合に注文する」「信頼している販売者で、お気に入りのスニーカーが80ドルを下回ったら購入する」といった条件をあらかじめ設定しておく。エージェントはその条件に従って商品を選び、在庫がない場合はあらかじめ許容された代替品に置き換え、特典も自動で反映する。条件から外れる場合のみ、人に確認する。
小売業者への示唆: この段階では、エージェントが顧客に代わって支払いを行い、必要な手続きを進めるために、安全性と透明性を確保する必要がある。具体的には、自動で購入できる範囲をあらかじめ設定できること (予算や時間帯、販売者、カテゴリーなど)、どのような購入が行われたかを後から確認できること (何を、なぜ購入したのか)、そして必要に応じて取り消せること(簡単なキャンセルや返金、条件の変更など)が求められる。
レベル4: 方針に沿って継続的に運用する(Autonomize)
レベル4では、エージェントはその都度の指示ではなく、あらかじめ決めた方針に沿って機能する。「生活必需品の支出を月300ドル以内に抑える」「2026年のあいだ、できるだけ費用を抑えて航空会社のステータスを維持する」「ベビー用品が切れないようにする」といった方針である。エージェントは、ニーズを継続的に把握し、必要な補充のタイミングを見越して手配し、複数の販売者を比較しながら、会員ステータスの維持や昇格といった点も含めて判断する。そのうえで、変更や返品、交換への対応も含め、購入後の手続きまで一通り担う。利用者は常に関わるのではなく、重要な判断や例外が生じたときにだけ関与するようになる。
小売業者への示唆: この段階では、一度の購入を獲得することよりも、エージェントに選ばれ続けることが重要になる。そのためには、ロイヤルティや適用条件、代替品、サービス保証などについて、エージェントがトレードオフを判断し、確実に実行できるよう、小売側の仕組みと直接連携する形で整えておく必要がある。単に商品を並べるだけでは不十分であり、「何が良い選択か」を決めるルールやポリシーまで示す必要がある。
レベル5: エージェント間連携(Networked autonomy)
この段階はまだ発展途上だが、将来的には、取引そのものがエージェント同士のやり取りを前提に進むようになる。エージェントは小売サイトとやり取りするだけでなく、価格や物流、配送、支払い処理、ロイヤルティなどを最適化する専門のエージェントとも直接連携するようになる。その結果、エージェント同士の連携の中で需要の振り向けが決まり、信頼は評価情報に基づいて形成され、共通のルールに従って取引が進む市場が形づくられていく。こうして、調達は利用者が意識しないまま、裏側で継続的に進行するようになる。
小売業者への示唆: レベル5は、すでにレベル4に習熟している企業によって形作られる。利用条件やルール、保証、ロイヤルティの仕組みなどを、エージェントが解釈・処理できる形で公開している小売企業は、こうしたエコシステムにおける需要の流れに影響を与える立場に立てる。一方で、それができなければ、エージェント同士のやり取りによって決まる流れの中で、価格だけで比較される、差別化の難しい存在になりやすい。
自動化曲線はどのように曲がるのか:どこで任せる範囲が広がり、どこで頭打ちになり、価値がどう変わるか
自動化曲線は、買い物の一連のプロセスにおいてAIエージェントがどこまで対応できるかを示すものである。同時に、人が実際にどのように任せていくのかを理解する手がかりとなる。また、自動化がカテゴリーや場面、あるいは消費者によって一様に進まない理由も示している。
実際の買い物では、消費者がこの曲線を一様にあがっていくわけではなく、どの場面でも完全に任せたいと考えるわけでもない。自動化によって手間が減り、体験としての価値も損なわれない場面では、任せる範囲は広がる。一方で、人が関わること自体に価値がある場面では、任せる範囲はそこで頭打ちになる。さらに、トレードオフや不確実性が伴う場合には、任せるかどうかが状況に応じて選ばれる。こうした違いを理解することは、小売業者がどこに投資するか、何エージェントに公開するか、そしてエージェントが介在する環境でどのように競争するかを判断するうえで重要である。
任せる範囲が広がる場面: 日常的に使うもの、繰り返し買うもの、後悔の少ない買い物
買い物が体験というより「タスク」として行われるカテゴリーでは、任せる範囲は速いペースで広がる。食料品や日用品、日常的に使う消耗品のように、後悔の少ない買い物は、自動化に適した領域である。こうした場面では、買い物の価値は新しい発見や自己表現ではなく、効率よく、確実に、安定して手に入ることにある。
エージェントが商品を正確に選び、決められた条件の範囲で処理を行い、代替品への置き換えや配送の変更にも無理なく対応できるようになると、消費者は購入の手続きまで含めて任せるようになる。関心は、どれを選ぶかではなく、実際にどうだったかに移る。注文は時間どおりに届いたか、予算内に収まったか、代替品が適切だったかといった点である。やがて承認はほとんど意識されなくなり、介入は例外的な場合に限られるようになる。
この変化は、小売業者の競争のあり方も変える。ブランドのストーリーや画面上の体験よりも、きちんと確実に届けられるかどうかという運用面での信頼が重視されるようになる。エージェントは、価格や在庫の有無、予定どおりに届くかどうか、変更や取り消しのしやすさといった、最終的に得られる価値を基準に判断する。そのため、在庫情報が正確で、配送の実績が安定しており、品切れ時の代替品の扱いや返品のルールが分かりやすく公開されている企業は、従来のように比較・検討されることがなくても、自然と選ばれる存在になる。この領域では、他と差別化されていることよりも、エージェントが読み取りやすく、確実に実行できることのほうが重要になる。
任せる範囲が頭打ちになる場面: 自分らしさや納得感が重視される買い物
高級品や人生の節目に関わる買い物のように、慎重に検討されるカテゴリーでは、任せる範囲は途中で頭打ちになることが多い。ここでは、買い物は単に何を買うかだけでなく、自分に合っているか、納得して選べるかが重要になる。消費者は、調べたり比べたり、内容を整理して判断材料をそろえる段階ではエージェントを積極的に使う一方で、最終的な判断や購入までを完全に任せることはしない。
たとえば高級バッグを購入する場合を考えてみる。消費者はエージェントに、ブランドごとの価値の変化を調べたり、中古市場の価格動向を見たり、自分の好みに合うかどうかを確認したりするよう求める。エージェントは、それに応じて、ほかに選べる商品を挙げたり、よりよい条件で買える機会を見つけたり、店舗での在庫状況を確認したりする。しかし、最終的にどれを選ぶか、実際に購入するかは人が判断する。
このような場面では、エージェントは実行する存在というより、調査や比較を支援する役割を担う。どこまで任せるかは、技術の問題ではなく、実際に手に取って確かめたいという志向や、周囲からどう見られるかといった意識、購入後に後悔したくないという観点によって決まる。重要なのは、任せる範囲が小さいからといって、それが価値の低さを意味するわけではないという点である。むしろ、このようなカテゴリーでは、人が関わること自体が価値の一部になっている。
ブランドにとって、この違いは極めて重要である。競争で勝つために、消費者を完全な自動化へと導く必要はない。むしろ、商品の背景や由来、製造のこだわり、長期的な価値といった情報を、エージェントが判断に活用できる形で示し、検討を支えられるようにしつつ、最終的な意思決定の場面では人がコントロールできる状態を保つことが求められる。この領域で重要なのは、どれだけ早く意思決定を進めるかではなく、どのような情報に基づいて判断が行われるかを形づくることである。
任せる範囲が選択的になる領域: 状況に応じて任せ方が変わる買い物
多くのカテゴリーは、これまで見てきた両極のあいだに位置する。旅行や家電、家具など、検討すべき点が多く判断が複雑な買い物では、どこまで任せるかは状況によって変わる。調べる、比べる、状況を把握する、選択肢をまとめるといった部分はエージェントが担える一方で、重要なトレードオフを伴う判断は人に委ねられる。たとえば旅行の場合、エージェントは旅程をまとめ、ロイヤルティ特典も踏まえて最適化し、遅延などのトラブルがないかを確認することもできるが、時間と快適さのどちらを優先するか、コストと変更のしやすさのどちらを取るかといった判断は人が行う。家電でも同様で、仕様や口コミをもとに候補を絞ることはできるが、デザインや手持ちの機器に合うかどうか、ブランドの好みが決め手になる場面では人が判断する。
こうしたカテゴリーでは、信頼は単に問題なく処理されることではなく、なぜその判断に至ったのかが理解できる「説明可能性」や、後から変更・取り消しができる「可逆性」によって築かれる。自動化が進むほど、消費者は「何をしたか」だけでなく「なぜそうしたのか」を知りたくなる。なぜその選択肢を選んだのか、なぜ別の商品に置き換えたのか、なぜ人の判断が必要だと判断したのか。順調に進む場合よりも、想定外の状況にどう対応できるかのほうが重要になる。
ここで重要になるのがメタデータである。人は、フィット感や質感、雰囲気、その場に合っているかどうかといった要素から直感的に判断するが、エージェントはそうではない。エージェントは、構造化された情報や文脈が分かる情報に基づいて判断する。そのため、人には直感的に分かる商品でも、エージェントには意味が伝わらず、結果として選択肢から外れてしまうことがある。こうした状況に対応するには、小売業者は、エージェントが細かな違いまで判断できる情報を整備するとともに、どの場面で人の判断に委ねるべきかを見極められるようにする必要がある。
エージェントが介在すると、価値はどこに生まれるか
これらの変化に共通しているのは、これまで段階を踏んでいた購買プロセスが、一気に進むようになる点である。これまで分かれていた検索、比較、検討といった段階が、エージェントを介した一度のやり取りで済むようになる。買い物はその都度判断するものから、継続的に処理されるものへと変わり、ロイヤルティは好みや感情ではなく、条件やルールによって決まるようになる。
その結果、どこで価値が生まれるかも変わる。人の関心を引くことだけでなく、エージェントが判断に用いる条件に沿って確実に対応できることが競争力につながる。利益は、サービス保証や、きちんと注文どおりに処理されるかどうか、ルールの明確さによって左右される。この変化は、一部の企業にとっては効率化や規模拡大につながる一方で、検索経由での顧客流入に依存している企業にとっては、間に入る役割がなくなるリスクを伴う。
重要なのは、すべてが一つの決まった形に収れんするわけではないという点である。自動化曲線は、すべてのカテゴリーが同じ到達点に向かうことを前提としているわけではない。むしろ、どの場面で任せることが価値を生み、どの場面ではそうでないかを示している。こうした傾向を早期に理解した小売業者は、手間を減らせる領域では自動化を進め、人が関わることに意味がある場面ではあえてそれを残すといった判断ができる。
これからの買い物のあり方は、自動化を広げることそのものが目的になるわけではない。体験の質やコスト、効率、信頼を高められるところに、自動化を適切に取り入れることが重要になる。自動化曲線は、その判断の指針となる考え方である。これをもとに、必要な機能への投資やカテゴリーごとの戦略、エージェントへの対応を進める企業が、AIエージェントがコマースの中心的インターフェースとなる時代において、最も競争力を発揮できるだろう。