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インバウンド観光は日本の経済成長の原動力になり得るのか

André Andonian、桑原 祐、山川 奈織美、石田 遼
インバウンド観光は日本の経済成長の原動力になり得るのか

日本のインバウンド観光は、訪日旅行者の国籍の偏り、旅行者が訪問する地域の偏り、主要都市における観光関連施設のキャパシティ不足、という課題を抱えている。これらを克服すれば、世界第3位の経済大国である日本は、観光立国としてのメリットを真に享受することができる。

日本のインバウンド観光は、2011年から2015年にかけて年間33%成長した。これは世界でも最速の成長率である。それでも観光業の収益はGDP全体のわずか0.5%にとどまり、旅行者に人気のアジアや欧米の国々と比較するとはるかに低い。例えば、タイは10.4%、フランスは2.4%、米国は1.3%である。では何がさらなる成長の障害になっているのであろうか。それは、アジア以外からの訪日外客が少ないこと、東京・京都・大阪の3大都市に旅行者が集中しすぎていること、そして宿泊と交通機関のキャパシティが大幅に不足していることである。

日本のリーダーたちは、インバウンド観光がもたらす成長機会を十分認識している。彼らは、インバウンド観光が日本経済の強力な原動力になり得ると考え、年間の訪日外客を2015年の1,970万人から2020年には4,000万人にまで倍増させ、その消費額を同じ時期に3兆5,000億円から8兆円に急増させるという大きな目標を打ち立てた。日本の観光産業は大きな節目を迎えており、これからの数年間で日本が世界中の観光客を惹きつける観光立国になることができるかが問われている。マッキンゼーの最新レポート「日本の観光の未来: 2020年への持続可能な成長に向けて」では、日本のインバウンド観光の目標達成に向けた課題と、具体的な取り組みについて検証している。

3つのテーマへの取り組み

日本は米国、中国に次ぐ世界第3の経済大国であるにもかかわらず、多くの旅行者は日本のことをよく知らない。日本の、人、文化、観光資源を世界へアピールする最高の舞台となる2020年のオリンピック・パラリンピックを控えて、今こそ行動を起こす時である。日本の観光産業が2020年までに年間の訪日外客数倍増の目標を達成するためには、官民が総力をあげて以下の3つのテーマに取り組まなければならない。

  1. アジア以外の旅行者の獲得: 海外からの旅行者が観光地に魅力を感じる要因には、代表的な名所旧跡の存在、行きやすさ、親近感など様々あるが、日本には訪日外客の国籍に大きな偏りがある。2015年にアジア以外から日本を訪れた旅行者は、全体のわずか16%に過ぎない。日本は、西欧の旅行者の関心を実際の旅行に結び付けることに関して、他のアジア諸国の後塵を拝している(図表)。具体的に言えば、日本への旅行を検討した西欧人の40%しか実際に訪日していないのに対して、タイではこの値が60%にも上る。これは、西欧の旅行者が単に日本でどのような観光ができるのかを知らないことも一因と考えられる。実際、日本の主な観光資源について具体的な情報を提供すると、彼らは日本の観光地に非常に強い興味を示す。

  2. 訪問する地域の偏り: 東京都、大阪府、京都府の一都二府は、国内総生産(GDP)に占める割合は28%であるが、訪日外客の旅程の大半を埋めており、インバウンド観光の宿泊日数の48%を占めている。これは逆に、それ以外の地域の観光地に大きなポテンシャルがあることを示している。

  3. 観光関連インフラのキャパシティ不足: 日本の主要都市の宿泊施設や観光関連インフラは、既にキャパシティ不足に陥りつつある。実際、2020年の需要シミュレーションによると、東京・京都・大阪の宿泊施設は最大50%不足し、羽田・成田空港の航空機の発着キャパシティは最大30%不足する。

現在の訪日外客の国籍の偏り、および訪問する地域の偏りを是正するには、日本は旅費が高いという認識、観光資源に関する低い認知度、地方におけるサービスモデルの未整備など、複数の根源課題に取り組む必要がある。根源課題に取り組むにあたり共通して必要となるのは、様々な局面での官民の連携である。現状では、旅行者のデータの集約やエンド・ツー・エンドの旅行体験の提供に向けた取り組みは非常に限定的である。

日本のインバウンド観光の目標を実現するためには、世界のベストプラクティスをモデルにした官民パートナーシップ(PPP)を確立し、次の5つのレバーを中心としたロードマップを構築することが重要となる。

  • 日本の観光地マネジメントモデル(日本版DMO: Destination Management Organization)を強化する。日本の80の観光地マネジメント組織(DMO)候補は、地方のサービスモデルを強化して、より大きなインパクトを実現する可能性がある。
  • 旅行者の入国から出国までの旅行体験をサポートするプラットフォームを構築する。統合されたオンラインプラットフォームの構築により、旅行者の購買行動や嗜好などの情報を捉え、分析し、豊かな顧客体験を提供することができる。
  • 宿泊施設や観光地のインバウンド観光のケーパビリティ構築を支援する。多くの宿泊施設や観光資源は、言語の壁や非効率な予約・購入プロセスなどの問題に取り組む際に、関連企業や政府機関からのサポートを得ることが大きな助けとなる。
  • マーケティングおよびプロモーションに外国人旅行者の視点を取り入れる。現在のJNTOや観光庁のスタッフはほぼ全員が日本人である。新しく組成されるPPPは、マーケティングとプロモーションの計画・実行を旅行者目線で進められるよう、意識的に取り組むべきである。
  • 旅行者を「アンバサダー」にするオンラインプロモーションを強化する。オンラインポータルで観光資源をできる限り効果的にわかりやすく表示し、好意的なくちコミを収集して拡散する機会を提供できる。

日本は、官民パートナーシップを通じて様々な関係者の力を結集させることで、インバウンド観光の成長を妨げる表面的な問題だけでなく根源課題に取り組み、旅行者の様々なセグメントに日本の魅力を伝えることができる。日本が一流の観光立国へと飛躍する条件は整っている。機は熟した。あとは、入念に調整された戦略的な行動あるのみである。

著者について

アンドレ・アンドニアン(André Andonian)はマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長。桑原 祐は日本支社パートナー、山川 奈織美は同エキスパート・アソシエイト・パートナー、石田 遼は同コンサルタント。
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